フランス 1800年代後期〜1900年代初頭
薔薇のコサージュを添えた、つば広の帽子をかぶる優雅で気品あふれる女性が描かれています。
光沢を帯びた黒のシルクドレスには、胸元に繊細なレーストリム。
透き通るような白い肌には淡くピンクのチークが差され、
微笑をたたえた唇と、柔らかく慈しむような眼差しが印象的です。
絵画は水彩と不透明水彩(ガッシュ)を併用して描かれており、
二種の絵具が織りなす深みのある表現が、女性の存在感をよりいっそう引き立てています。
ガラスがはめ込まれた小さなフレームには、
当時のままと思われるベルベットのリボンがあしらわれ、
長い時を経たフレームの木地には、やわらかく色の褪せた風合いと擦れが美しく残ります。
19世紀フランス派が生んだ、可憐で詩情ある一点です。